技術情報
微粒子技術コラム
応用編
ビーズ径と材質について
ビーズ径について
ビーズミルの粉砕・分散効率に影響を与える因子として、粉砕室やアジテータの形状、運転条件などがあるが、なかでもビーズの影響は大きい1)、2)。ビーズには径や材質(密度)などの因子があり、「(1) 1次粒子の粉砕なのか、2次粒子(凝集体)の分散なのか」「(2) 砕料粒子径」「(3) 砕製物粒子径」「(4) 粒子の硬さ」「(5) 粒子の密度」「(6) スラリー粘度や密度」など考慮して選択する。ビーズ径の選択の目安として、砕料の最大粒子径の10~20倍の大きさを用いる。また、ビーズ径の約1/1000が砕製物の到達粒子径(メディアン径)の目安となる。
粒子が小さくなると粉砕するエネルギーが減少するため(ただし単位質量当りの破砕エネルギーは増大する)、単位時間当たりの粒子とビーズの衝突回数を増加させることが重要となる1)。その対策として微小ビーズを使う。これは、ビーズの個数はビーズ径の3乗に逆比例するため、微小ビーズを用いるとビーズ同士の接触点が多くなり、スラリー中の粒子とビーズが接触する確率が高くなるためである。しかし、ビーズ径が小さくなるとビーズの質量も3乗に比例して小さくなるため、ビーズが粒子に与える粉砕力は小さくなる。これを補うためには密度の大きい材質のビーズを選択するか、またはアジテータ周速を速くする必要がある。
ビーズ径と砕料の最大粒子径の関係
均一球を六方最密充填すると、次の2つの空孔ができる。
1. T空孔
4個の球が正三角すいの頂点をそれぞれの中心として配列したときにできる。6個の接触点と4個の出口を有し、それぞれの出口はいずれもR空孔に通じている(図1)。
2. R空孔
4個の球が正方形状に並び、正方形の中心を通る垂線上に2個の球が配列してできる。(図2)。角度を変えてみれば3個の球が正三角形状に並び、その上に同じ配列で水平に30°だけ回転させて3個の球を配列させると表現してもよい。合計6個の球によって囲まれ、12個の接触点と8個の出口を有し、それぞれの出口はいずれもT空孔に通じている。
T空孔もR空孔も、出口の3つの円弧で囲まれた最狭部はすべて等しく、その内接円の半径は、充填した均一球の半径をrとして0.155rである。R空孔1個につきT空孔は2個の割合で存在し、空孔を次々にくぐりぬけるものとすれば、必ず「R-T-R-T………」というように交互にRとT空孔に出会う3)。
ここで、ビーズミル内でビーズが最密充填されていると考えると、ビーズの接触点間に砕料が捕捉されるためには0.155 dGM 以下の砕料径が必要である。
ここで、dGM はビーズ径[m]である。計算上、ビーズ径は砕料の最大粒子径の6.5倍以上でよいことになるが、ビーズミル内でのビーズの充填特性や砕料の特性などを考慮すると、粉砕・分散の効率化には、ビーズは砕料の最大粒子径の10倍以上の径が選択の目安となる。
ビーズ材質について
ビーズミルで用いられる主要なビーズ材質には、ガラス、アルミナ、ジルコン(ジルコニア・シリカ系セラミックス)、ジルコニア、スチールなどがある。これらは、材質のかさ密度の違いによる粉砕効率やビーズからのコンタミネーションの許容によって選択する。ビーズの成分を表1に示す。
ビーズ径に対するビーズ質量とビーズ個数
ビーズ径は小さくなると単位体積あたりの個数が増加する。ビーズの質量や個数は式1~3にて表すことができる。
ビーズ径に対するビーズ質量
上記の式を用いて、 ビーズ径とビーズ質量比の関係を表2に示した。また、ジルコニアビーズ1個当たりの質量を表3に示す。ここでは、ジルコニアビーズのかさ密度を6000 kg/m3とした。
1Lあたりのビーズ個数
ビーズが正方配列層を形成していると仮定し、1Lあたりのビーズ個数を表4に示した。
また、ビーズ充填密度がわかっている場合、ビーズ充填密度とかさ密度からビーズ個数を求めることができる。ジルコニアビーズの例を表5に示した。なお、ジルコニアビーズのかさ密度を6000 kg/m3とした。
ビーズ径により、充填密度(空間率)が異なる場合、ビーズ個数はビーズ径の3乗に逆比例しない。また、ビーズ充填量からビーズ個数を求める方法(式3)もあるが、表5と同じ結果になる。
まとめ
ビーズ径の選択は砕料や砕製物の粒子径によって決まり、より細かくするためには径の小さいビーズが有効である。
また、粉砕エネルギーやコンタミネーションを考慮して適切な材質や径を選ぶ必要がある。
引用文献
- 石井利博、飯岡正勝:2003年度色材研究発表会講演要旨集、p.148、色材協会(2003)
- 石井利博、飯岡正勝:2003年度秋期研究発表会講演論文集、p.40、粉体工学会(2003)
- 三輪茂雄:粉体工学通論、p.48、日刊工業新聞社(1981)