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微粒子技術コラム

機械選定編
ビーズミルの構造について(1)

〜ベッセル方向の違い〜

ビーズミルは竪型と横型があり使用条件や双方の特長を考慮した上で決める必要がある。ここではベッセルの方向や軸封装置について解説する。

竪型ビーズミル

竪型ビーズミルは撹拌部材の形状に関わらず、横型よりも粉砕速度が速い結果が得られている1)、2)。これはビーズが自重によってベッセル下方で密の状態となり、粉砕エネルギーが大きくなるためだと考えられている。起動トルクが大きく、横型と比較して大型のモータが必要である。
軸封装置にはグランドパッキンやメカニカルシールを用いる。ビーズの交換は容易だが大型化に伴い装置の長さが高くなるため、取扱いやメンテナンスが難しいが、スラリーの流量によるビーズとのバランスは取りやすい。竪型ビーズミルのイメージを図1に示す。

横型ビーズミル

横型ビーズミルは起動時にビーズの偏りが少なく起動トルクが小さい。大型化にも対応でき、さらに高周速でアジテータを運転出来るため条件の幅が広がるが、流量や粘度のバランスによってはビーズがミルの出口に偏ることもある。
軸封装置にはメカニカルシールを用いる。竪型と比較するとビーズの交換には時間がかかるが、ベッセルやシャフトなどのメンテナンスは容易である。横型ビーズミルのイメージを図2に示す。

竪型ビーズミルのイメージ
図1:竪型ビーズミルのイメージ
横型ビーズミルのイメージ
図2:横型ビーズミルのイメージ

軸封装置

軸封装置にはグランドパッキンやメカニカルシールなどがあり、シール流体が機外へ漏れないようにしている。グランドパッキンとメカニカルシールの特長を次に示す。

1. グランドパッキン

グランドパッキンは一般に断面が角形である。これをスタフィングボックス内に詰め込むことにより、シャフトとの摩擦面でシールする。しかし、摩擦抵抗が大きいため、スラリーを漏らすことで摩擦面の潤滑と冷却を行う3)。漏れる量はパッキンの締付けによって調整するが、締め付けが強すぎると摩擦が増加し、発熱、摩耗、動力損失などが発生する。
グランドパッキンは竪型ビーズミルで水性スラリーの場合に使用され、安価でメンテナンスが容易である。グランドパッキンのイメージを図3に示す。

グランドパッキンのイメージ
図3:グランドパッキンのイメージ

2.メカニカルシール

メカニカルシールは各種回転機械の軸封部に使用される代表的なシールであり、機器の性能と信頼性を支える上で不可欠な機械要素である。
基本構造はスプリングなどによって軸方向に動く摺動環と固定された摺動環から構成されている。軸に垂直な摺動環の面が互いに接触し、相対的に回転することで流体の漏れを最小限に制限する4)
メカニカルシールが流体をシールする方法は幾つかあり、1組の摺動面でシールする方式をシングル型、2組使用する方法をダブル型、タンデム型という4)
溶剤系スラリーを処理する場合は竪型でも横型でもダブルメカニカルシールを使用する。スラリーの配合に含まれる溶媒をシール液に使用し、加圧して用いる。信頼性の高いシール方式だが、高価でありメンテナンスが難しい欠点がある。

メカニカルシールのイメージ
図4:メカニカルシールのイメージ

引用文献

  1. 楠 真澄:工業塗装、p.137、p.71(1995)
  2. 2竹内信治、飯岡正勝、楠 真澄:1994年度春期研究発表会講演論文集、粉体工学会、p.219 (1994)
  3. 宗孝:プロの教えるシールのごくい、技術評論社、p.54(1980)
  4. 日本産業機械工業会 風水力機械部会 メカニカルシール委員会:メカニカルシールハンドブック(改訂第3版)、p.4(2010)