技術情報
微粒子技術コラム
機械選定編
ビーズミルの構造について(2)
〜アジテータの形状について〜
ビーズミルは、撹拌部材のアジテータを回転させることで粉砕室内のビーズを撹拌し、衝突力やせん断力で砕料や凝集体を粉砕・分散する装置である。アジテータには様々な形状があり1)、粉砕・分散効率に影響を与える因子の一つでもある。ここでは、アジテータの形状について説明する。
ディスクタイプ
「ディスクタイプ」はシャフトとディスクを組み合せたシンプルな構造であり、大型化やセラミックス化にも対応している。その構造のイメージを図1に示した。
ディスクは図2~4のように色々な形状があり、孔(穴)の形状や大きさが異なるとスラリーの流動やビーズの挙動も変わり粉砕・分散効率が変化する。
形状が同じディスクでは孔数が多く、孔径の大きい方が粉砕・分散の効率が良い。ビーズの流動はディスク同士の間隔を狭くすると乱流状態になり、広くすると層流に近づく1)。対象物によりディスクの厚みや間隔には最適値が存在する。
ディスクの外側とベッセル間ではビーズの周方向速度の速度差によるせん断力が生じる。ビーズの速度差と仕事領域を図5に示す。
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ピンタイプ
「ピンタイプ」はアジテータとベッセルにピンが取り付けられている。アジテータ側の動ピンとベッセル側の静止ピンとの間にいくつものせん断域があり、スラリー中の粒子はそれらのせん断域を順次通過しながら粉砕・分散される。ディスクタイプと比較すると仕事領域が狭いことで均一な仕事領域が形成され、スラリー中の粒子がショートパスする確率が低下するので微細でシャープな粒子径分布が得られる。構造のイメージと形状、ビーズの速度差および仕事領域を図6~8に示す。
粉砕・分散の効率は動ピンが多いほど高く、動ピンと静止ピンの間隔は狭いほうがよいが、ピン同士の間隔はビーズ径の4倍以上なければビーズのかみ込みによる割れが発生する可能性がある。しかし、ベッセル側の静止ピンを取り除くと粉砕・分散の効率は低下する2)。一般にピンの断面は丸だが、矩形(くけい)にすると粉砕・分散効率は向上する。
高粘度のスラリーの場合、ディスクタイプではスラリーがディスクと共回りして粉砕・分散しないが、ピンタイプでは、静止ピンによって強制的にかき取られるので高粘度のスラリーも粉砕・分散する。
しかし、ピン間のせん断力やビーズに与える作用が強いため、周速が速い場合はビーズやミル内部の部材の摩耗やスラリーの発熱に注意が必要である。また、構造が複雑になるため、セラミックス化などが難しいなどの問題がある。
シングルロータタイプ 3)
「シングルロータタイプ」はベッセル内のスペースを大きくとり、ビーズを大量に循環することができる。ビーズの動きをコントロールすることで独自のらせん層流を形成し、理想的なビーズの動きを実現できる。構造のイメージを図9に示す。
アジテータから発生した遠心力はディスクタイプやピンタイプよりもベッセル内壁に押し付ける力は弱いが、ビーズの流れに寄与する力が多いためビーズが均一に分布して粒子に適切なせん断力を付加できる。これによって再凝集を抑えた高度なナノ粒子生成を可能とした。
なお、撹拌部材は対象物やスラリーの性状により粉砕・分散効率に違いがあるため、粉砕・分散効率を向上させるためには対象物やスラリーの性状を考慮して、最適な形状を選定する必要がある。
引用文献
- 中山 勉:コンバーテック、34、1、58(2006)
- 楠 真澄:工業塗装、137、71(1995)
- 田村崇弘:コンバーテック、40、12、90(2012) 資料はコチラ(PDF)