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微粒子技術コラム

機械選定編
湿式ビーズミルのビーズとスラリーの分離方法

〜湿式ビーズミルのセパレータについて〜

ビーズミルの粉砕室内では砕料がビーズと衝突して粉砕される。砕製物は「セパレータ」を通り、ミルの出口からスラリーのみ排出される。
セパレータとはビーズとスラリーを分離する機構であり、この性能は使用可能なビーズ径の範囲に影響を及ぼす。今回は湿式ビーズミルのセパレータの種類と、その特長について解説する。

セパレータの種類と、その特長について

1.ギャップタイプ

「ギャップタイプ」は固定環と回転環のクリアランスを利用したセパレータである(図1)。その他に、「スリットタイプ」というクリアランスを利用したセパレータもある。

図1 ギャップセパレータ

回転環と固定環のクリアランスは回転環の面振れやビーズの粒子径分布、回転環の摩耗を考慮してビーズ径の1/3に設定する。例えば、クリアランスがビーズ径の1/2以下の場合、ビーズのかみ込みや回転環の摩耗が生じる可能性がある(図2)。
また、セルフクリーニング機構※)を持つため圧力損失も少なく目詰まりがないことから高粘度スラリーに有効だが、組立時のクリアランスの調整上、微小ビーズを使用することはできない。

図2 ビーズ径とクリアランスとの関係

2.スクリーンタイプ

「スクリーンタイプ」はビーズミルの初期から使用されており、竪型にも横型にも利用されるようになった(図3)。

図3 カートリッジスクリーン

ギャップタイプよりもスラリーが通過する面積が広く(開口面積)、スクリーンの目開きはギャップタイプよりも狭くできるので、微小ビーズの使用が可能である。目開きは、精度やビーズの粒子径分布などを考慮してビーズ径の1/3に設定する。
微小ビーズを用いることは可能だが、

・ビーズの摩耗により径が小さくなる
・高粘度スラリーによってビーズがスクリーンに流される
・スラリー中の粗大粒子がスクリーンの目開きよりも大きい

上記の場合は、スクリーンに詰まる可能性があるため注意が必要である。

3.遠心分離タイプ

「遠心分離タイプ」は遠心力を利用してビーズとスラリーを分離するセパレータである。スクリーンタイプでは使用できない微小ビーズや粗大粒子があってもセパレータが閉塞せずに運転できる(図4)。

図4 遠心分離ホイール(スクリーンレス)

セパレータの分離能力はスラリーの粘度、比重、セパレータの回転数、ビーズ充填量、ビーズとスラリーの比重差等に影響される。
アジテータとセパレータを同軸で遠心分離する場合、ビーズ分離と粉砕・分散力のバランスが必要となる。スケールアップをするとセパレータの回転数が低下することで遠心分離が難しくなる場合もある。
そこで、別駆動機構を付与するとビーズ分離と粉砕・分散力を独立できるため、幅広い運転条件の設定が可能となる。これにより、粉砕と分散の繊細なコントロールと微小ビーズの安定した使用が可能になる。
次にセパレータの周速とビーズ径の関係について示した。

分離ビーズ径1)、2)

質量m[kg]のビーズが回転(公転)運動しており、その回転半径をr[m]、角速度をω[rad/s]とすると、ビーズは回転半径方向外向にmrω2[kg・m/s2]の力(遠心力)を受ける。ただしビーズがスラリーとともに回転運動をしているときは、ビーズの周囲のスラリーにも遠心力が作用し、この力はアルキメデスの原理によってビーズに対する回転半径方向内向きの浮力となる。
そこで、正味の遠心力は、

となる。ここで、ρBはビーズの密度[kg/m3]、ρはスラリーの密度[kg/m3]とする。
このような遠心力の場におけるビーズの運動を考える際、半径方向のみ注目して一次元運動として取り扱う場合は、次の近似が許されることを前提にしている。

・ビーズと流体の回転速度は等しい
・各瞬間におけるビーズの半径方向移動速度(遠心沈降速度)は、
その瞬間のビーズ半径位置の遠心力と流体の抗力が、ビーズに対して定常的に作用した場合の
終末速度と等しい。

回転半径方向のビーズ速度をu r[m/s]、ビーズ径をD[m]、CDを抵抗係数[-]とすると

さらに終末速度は

なので、

2式

ここで、ビーズ周りの流れがストークス域と仮定できる場合は、

3式

3式

を式②に代入して、式(4)を得る。ここで、スラリーの粘性係数をμ[Pa・s]とする。

4式

よって、

より、分離ビーズ径の式(5)を得る。ここで、速度の接線方向成分Uθ[m/s]とする。

5式

式(5)のUθをセパレータの周速、μをスラリーの粘度、u rをスラリー流量の関数とすると分離ビーズ径と各パラメータとの関係がわかる。
以上より、ビーズ径、ビーズとスラリーの比重差、セパレータの回転数が大きいと遠心分離能力が向上し、スラリーの粘度、流量が大きいと遠心分離能力が低下することがわかる。

m:質量 [kg]
r:回転半径 [m]
ω:角速度 [rad/s]
ρB:ビーズの密度 [kg/m3]
ρ:スラリーの密度 [kg/m3]
u r:回転半径方向のビーズ速度 [m/s]
D:ビーズ径 [m]
CD:抵抗係数[-]
Uθ:セパレータの周速

4.遠心分離スクリーンタイプ

「遠心分離スクリーンタイプ」とは、遠心分離タイプとスクリーンタイプを組み合わせたセパレータである。
遠心力を利用してビーズとスラリーを分離し、スクリーンでビーズの流出を防止する仕組みとなっている(図5)。遠心力があるためスクリーンタイプの欠点だった高粘度スラリーや供給量が多い時にビーズがスクリーン側に流されて閉塞する問題点が解決されている。

図5 遠心分離スクリーン

まとめ

セパレータの特長を表1にまとめた。粘性やビーズ径によって適したセパレータがあるためスラリーに適した選定が大事である。

表1 セパレータの特長

※セルフクリーニング機構について3)

流体と壁が接する境界には流体の静止膜である境膜が存在する。静止しているギャップ面には境膜が発生することから、固定された隙間の狭いギャップ間では、この境膜の抵抗により流体が通過できない。ギャップの一方を回転させて流体の流れを速くする(乱流)と、境膜が薄くなるため抵抗が少なくなり、目詰まりの発生や圧力損失が少なくなる3)
この機構を「セルフクリーニング機構」という。

引用文献

  1. 粉体工学会編:“粉砕・分級と表面改質”、p.408、NGT(2001)
  2. 日本粉体工業技術協会編:“粉体分級技術マニュアル”、p.22、広信社(1990)
  3. 中山勉:“超微粒子・ナノ粒子をつくるビーズミル”、p.145、森北出版(2011)