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技術情報

微粒子技術コラム

運転編
循環式について

循環式はスラリーをホールディングタンクとビーズミルの間で循環させる方法である。作業性が良く、処理時間の長い難粉砕性や難分散性のスラリーに適している(図1)。

図1 循環式のイメージ図

ビーズミルを用いて粒子をより細かくシャープな粒子径分布にするためには、ミルを通過する回数(パス回数)が多いほうが良い。これは粒子がミル内を多重パスするためである(図2)。

図2 パス回数が異なる場合の粒子径分布

パス回数を増やすためにスラリーの流量を多くすると、ミルに充填されたビーズがスラリーに流されて出口側に偏る可能性がある。これを防ぐためにはベッセルやアジテータ、セパレータなどのビーズミル形状を検討することが大切である。
ミルを通過した砕製物の粒子径はパス式ではパスごとに変化し、循環式では時間の進行に伴い連続的に進行する(図3)。

図3 パス式と循環式の運転時間と粒子径の変化の違い

よって、循環式は粒子径のコントロールや自動化運転を可能にし、運転中に粉砕・分散の進行状況の確認や添加剤などの添加も任意に行える。
また、1パスあたりのミル内滞留時間がパス式よりも短いため、ミル入口と出口の温度差が少ない定温処理ができる。さらに、ホールディングタンクや熱交換器などで外部冷却を行えばスラリーの温度制御や低温処理が可能となる。
循環式のユニットは基本的にビーズミル、ポンプおよびホールディングタンクで構成されている。処理したスラリーを回収する製品タンクを追加する場合や、プレミキシング用のタンクとホールディングタンク、製品タンクを分ける場合がある。タンクを別にするとスラリーがミル内を確実に通過するため、未処理の粒子を無くすことができる。ユニット化したイメージを図4に示す。

図4 ユニット化した循環式のイメージ図

運転方法の比較

3種類の運転方法(パス式、多重パス式、循環式)を比較するためにアルミナを粉砕し、粒子径(d95)と動力原単位の値を図4に示した。パス式(1パスのみ)は流量を変えた運転である。多重パス方式と循環式は同じ流量で運転した。複数回パスすると1パス方式よりも粉砕効率が良いことがわかる。複数回パスした多重パス式と循環式を比べると、多重パス式は運転初期から粉砕効率は良いが、パス回数が増加すると循環式と差が無くなった。

まとめ

運転方法の特徴を表1にまとめた。前述の図2と、図5の結果から難粉砕物やナノメートルサイズまでの微粉砕や分散処理の場合、流量を増やして多重パスや循環を行う必要がある。作業性を考慮すると循環式にメリットがあると考える。

表1 パス式と循環式の特徴の比較

図5 パス式と多重パス式、循環式での動力原単位と95%粒子径の変化

循環式におけるパス回数と未処理粒子が残る確率

ホールディングタンクにV(m3)のスラリーを仕込み、未処理の粒子数をCとする。初期の未処理粒子数をCsとする。ミルを通過した粒子は全て処理され、ホールディングタンク内は完全に混合していると仮定する。
流量M(m3/h)で循環を行い、微小時間dtにおいてホールディングタンクから流出する未処理粒子Cとホールディングタンク内の減少する未粉砕粒子dCは、

となる。
これを解くと

t=0のときC=C0よりk=㏑C0
よって

よって、
1%の確率で粒子がタンク内に残るパス回数

-㏑0.01=4.6 → 5パス

0.01%の確率で粒子がタンク内に残るパス回数

-㏑0.0001=9.2 → 10パス

この結果より、循環方式では10パスすることでホールディングタンク内の未処理粒子は0.01%となるため、目標の粒子径に到達するまでに10パス以上ミル内を通過することが望ましい。

V:スラリーの量[m3]
C:未処理の粒子数[-]
Cs:原料の粒子数[-]
M:流量[m3/hr]