ナノ粒子とは
ナノ粒子は、100ナノメートル(nm)以下の直径の粒子を指します。
1ナノメートルは、1メートルの10億分の1という長さを示す単位です。
具体的には、1ナノメートルは髪の毛の太さの10万分の1ですので、想像を絶するような小さな世界です。
ナノ粒子などを活用した技術は「ナノテクノロジー」とも呼ばれます。
ナノ粒子の研究と利用は近年爆発的に増えており、様々な分野でナノ粒子を使った技術が利用されています。
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ナノ粒子の特性
ナノ粒子は、ナノ粒子よりも大きい粒子に比べて、特別な特性を発揮する場合があります。物質の種類によって、その特性は様々ではありますが、ナノ粒子化することによって得られやすい4つの特性があります。
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体積に対する表面積の大きさ
ナノ粒子化すると、最も大きく変わるのが「体積に対する表面積の大きさ」です。表面積が大きくなると、その分化学反応を起こしやすくなったり、イオンや物質の吸着効果が高くなったりします。ゼオライトは多孔質な構造をしているため、ナノ粒子化すると表面積が上がり、飛躍的に吸着性能が上がることが知られています。
拡散性
液中での「拡散性」もナノ粒子化によって大きく向上します。
拡散性とは、混ざりあった状態をどれだけ維持できるかを示します。ナノ粒子化した物質は、一度液体に混ぜると、その後混ぜ合わせなくても、長時間に渡って混ざりあった状態を維持します。この高い拡散性があると、目的の物質を均一に塗布したり、安定した化学反応を得られたりするのです。
透光性
高い分散性と相まって性能を発揮するのが「透光性」です。
ナノ粒子化した物質は、透光性が高くなり、光を通すようになります。そのため、これまで透明度の関係でコーティングが施せなかった場所にコーティングを施したり、透明でありながら光の屈折率をコントロールするといったことが期待されています。
蛍光発光
ナノ粒子化すると多くの物質が「蛍光発光」するようになります。蛍光発光は、光の粒である光子がナノ粒子を励起(れいき)することによって発生します。わかりやすく言うと、ナノ粒子化することによって、物質がわずかな力で振動して、蛍光発光のような特性が表れるのです。蛍光発光の色味は、物質によって変わるだけでなく、粒子径でも変化するのが特徴です。この特徴は、バイオセンシングの技術での利用で期待が高まっています。
ナノ粒子の主な用途
ナノ粒子は、今や様々な分野で活躍しており、私達の生活の中でも意外に身近な場面で利用されています。
ただし、多くの分野では研究中です。実用化にはまだまだ時間がかかるものが多いでしょう。
研究中のものを含めて、ナノ粒子が活用されている分野の具体例をいくつか紹介していきます。
エレクトロニクス
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ナノ粒子の中でも、金属のナノ粒子はエレクトロニクスの分野で活躍しはじめています。
銀や銅のナノ粒子は「導電性インク」の材料として研究が進んでおり「プリンテッド・エレクトロニクス」の分野で活躍が期待されています。導電性インクの技術が確立できれば、基盤内部に超微細な配線が可能になり、スマートフォンなど電子デバイスをさらに小型化できるでしょう。
現在はまだプリンテッド・エレクトロニクスは研究段階であり「イオンマイグレーション」が課題となっています。イオンマイグレーションは、湿度が高い状態で微細な電子回路に通電すると、陽極側の金属がイオン化して、陰極側に移動して短絡(ショート)してしまう現象を指します。イオンマイグレーションが解決すれば、電子デバイスのさらなる小型化が実現されるでしょう。
医療分野
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医療分野では、ドラッグデリバリーシステムと呼ばれる分野で主に利用されています。ナノ化した物質で薬をコーティングし閉じ込めると、正常な細胞には作用せず、がん細胞などの問題箇所にだけ薬が作用するのです。こうすることで、治療薬の副作用が他の細胞に及びにくくなり、副作用を減らせます。このような薬を閉じ込める仕組みを「リポソーム」と言い、がん細胞だけでなくあらゆる分野での薬に適用する技術として研究が進められています。
また、ナノ粒子化した物質の蛍光発光特性も「バイオセンシング技術」で活かされています。ナノ粒子を用いたバイオセンシング技術では、蛍光発光するナノ粒子を細胞などの生体分子に結合させ、その生体分子の挙動を観察するという利用が一般的です。利用される物質の生体適合性(アレルギーなどを引き起こさないかなど)を含めて、安全性を確かめる研究が進められています。
光触媒コーティング
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ナノ粒子化した物質は、光触媒の性能が極端に高くなる場合があります。光触媒とは、光の特定の波長を受けると「抗菌・抗ウィルス」や「親水性(濡れやすくなる)」などの性質が表れることです。このような性質を持つナノ粒子で、最も代表的なものが「酸化チタン」です。
酸化チタンナノ粒子を用いた光触媒コーティングは、様々な場面で使われており、外壁材、車のミラー、街灯、空気清浄機などに施されています。光触媒の機能があると、光があるだけで、、自動的に抗菌・抗ウィルス作用を発揮し、その上、少しの水で汚れを洗い流せるようになります。光触媒を活用すれば、清掃の頻度を下げられるのです。
酸化チタンばかりが注目を浴びていますが、光触媒の機能を発揮する物質は他にもたくさん確認されています。しかしながら、酸化チタンが最も化学的に安定した状態を保てる上に、安価に手に入ることから、現在利用されている光触媒コーティングには、酸化チタンがほとんどの場合で採用されています。
光学デバイス
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ナノ粒子化した物質は、あらゆる光学デバイスの性能を向上できるとして、様々な分野で研究が進んでいます。
あるナノ粒子をパネルにコーティングすると光の反射を防止できたり、太陽光パネルにシリコンのナノ粒子を塗布すると発電効率が上がったりと、様々な研究報告が上がってきています。また、酸化ジルコニウムナノ粒子の分散液を塗布すると、光の屈折率をコントロールできるため、光学レンズの分野で活躍し始めています。
ナノ粒子の作り方
ナノ粒子の作り方には様々な手法がありますが、その種類に関しては大きく分けて3つの手法があります。
ブレークダウン
ビルドアップ
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固相法
一般的な粉末を作るのと同じように、物質のバルク(塊)を機械で粉砕してナノ粒子を作りだします。安く加工できる手法ではありますが、粒子の直径が安定しないというデメリットがあるため、安定した性質を求める場合には適しません。
機械的粉砕法
ナノ粒子の液相中での物理的および機械的手法による分散技術は著しく進歩しています。その代表的な手法に「ビーズミル」があります。ビルドアップで生成されたナノ粒子は、凝集体を形成しやすいです。ナノ粒子として用いるためには1次粒子径近くまで解砕し、均一化した状態を維持する必要です。このように微粒子の生成には、ビーズミルは有効です。
化学法反応
粒成長現象を用いて、原材料となっている多結晶体を溶融せずに、単結晶を育成する方法である。大きな結晶に微細な結晶粒子付くことで結晶に成長する。しかし、凝集体を形成しやすい。
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液相法
液体の中に溶け込んでいる物質を固体として取り出す手法を指します。「液相法」は湿式法と呼ばれる場合もあります。主に、沈殿を利用したり、ゲル化させたり、還元を利用する手法があります。
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気相法
主に真空中で物質を加熱し、蒸発させて冷却するという手法です。熱源には電気炉やレーザー、プラズマなどがあげられます。気相法を用いた手法は生産性に優れることが多い上、不純物も少なくナノ粒子を製造できます。また、気相法は「乾式法」とも呼ばれることがあります。
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ビーズミルの仕組み
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