材質 | ジルコニア | |
訴求機能・特徴 | 高硬度、耐靭性、耐薬品性、耐摩耗性、酸素透過性、高屈折率 | |
平均粒径 | 0.4 〜5 μm | |
粒子形状 | 球状 | |
具体的用途例 | 積層セラミックコンデンサー、ITOフィルム(光学調整層)、高額ガラス、圧電センサー、スマートフォンボタン部品、電池材料(SOFC、LiB正極添加剤)、粉砕ボール、光符ファイバー接続部品、自動車排気ガス浄化、排気ガスの空燃比コントロール用センサー、石油精製プラント、人口歯、インプラント材料、刃物、時計枠、工具 | |
利用用途(粒径別) | 1〜5 μm | 助触媒 |
500 nm〜1 μm | コンデンサー、歯科材料 | |
100 nm〜500 nm | 工業用セラミックス、センサー、電池材料 | |
10 nm〜100 nm | 高屈折率材料 |
ジルコニアの主な機能と用途
ジルコニアは、ジルコニウム(Zr)の酸化物である「二酸化ジルコニウム」を指します。ジルコニアは、常圧下での融点が2700℃となっており、極めて耐熱性の高い素材です。
ジルコニアは、常温下では単斜晶構造をしていますが、1170℃で正方晶、2370℃で立方晶に結晶構造が移り変わります。温度が上下すると構造が変化しますが、このときに体積が変わってしまうため、激しい温度変化を何度も繰り返すと、外部から力を加えなくても自ら崩壊してしまいます。
単体のままだと上記のような構造変化を起こしてしまうため、高温下での利用する製品の場合は、添加物を加えます。正方晶で安定化させる場合は、イットリウム、カルシウム、マグネシウム、ハフニウムなどを組み合わせて4~15%程度添加します。この状態にしたジルコニアを「安定化ジルコニア」、または「立方晶ジルコニア」と呼びます。
安定化ジルコニアは、高温下で固体電解質の役割を担うようになり、帯電した物質を移動できるようになります。このような特性から、安定化ジルコニアは燃料電池や酸素センサの材料として使われます。
また、安定化ジルコニアは、ダイヤモンドとかなり近い光の屈折率を持ち、モース硬度も8~8.5程度と高い特徴もあるため、宝飾品として利用されます。宝飾品で利用される安定化ジルコニアは「キュービックジルコニア」という名前で普及しているため、聞いたことがある方も多いでしょう。
キュービックジルコニアは、1カラット1ドル程度とダイヤモンドと比べると100~500分の1ほどと大変安価です。しかしながら、専門家ではない人が見ても見た目にはほとんど区別がつかないほど見た目が似ており、流通当初は「模造ダイヤモンド」と揶揄されたほどでした。
安定化ジルコニアよりも添加する酸化物の割合を下げ、部分的に安定化させたジルコニアを「部分安定化ジルコニア」と言います。部分安定化ジルコニアは、粘りが強くなり、高い靭性を発揮するようになります。
ジルコニアは、機械的強度にも優れていることから、歯科用途としてや刃物や工具などにも使用されます。インプラントとして使われる場合は、過去には安定化ジルコニア、または部分安定化ジルコニアが使われていました。しかし、安定化ジルコニアなどは透明度が低いという問題があり、見た目が他の歯と異なるというデメリットがありました。現在は透明度の高い純粋なジルコニアを利用する手法が開発され、審美性も向上しています。
高純度のジルコニアを利用したセラミックスは「ファインセラミックス」と呼ばれます。インプラント用途でも言えることですが、ジルコニアは金属ではないため、変色や劣化を起こしにくく、金属イオンなども発生しません。そのため、生体との親和性が高く、長期間安定した状態で生体の中で利用できます。このような特徴から、ジルコニアは人工関節や人工骨などとしても利用されます。
その他、ジルコニアは優れた機械的強度と高靱性、高摺動性などを活かし、ギアなどの耐摩耗性部品や高圧下で使われるノズルなどとしても使われています。
ジルコニアナノ粒子の主な機能と用途
ジルコニアをナノ粒子化すると、透明性と屈折率を両立できる素材になります。そのため、光学用途に使われることがほとんどです。ジルコニアナノ粒子を透明な樹脂に分散させて添加することにより、光学特性をもたせて利用することが期待されています。
また、ジルコニアナノ粒子を分散させたものを、光学特性を持ったコーティングとして利用する場合もあります。ナノ粒子化されたジルコニアは分散液として販売されており、コーティング材料としてや成型材料用途として利用されています。