ナノ粒子の製造技術を取り巻く現状
ナノ粒子とは、粒子の直径がナノメートルオーダーの(ナノは10億分の1メートル)の超微粒子を指します。ナノ粒子は、従来の微粒子(1マイクロメートル以上)と比べて、表面積比率の増大による反応性の向上、透光性、蛍光発光などの特性を発揮するようになります。これらの特性を利用し、ナノ粒子の物質は特殊コーティング材や触媒、半導体技術などの分野でその需要が高まっています。
ナノ粒子を製造する技術は1980年代ごろから特許申請されており、現在までに様々な製造方法が発明されてきました。現在では、ナノ粒子の製造技術はある程度成熟し、ナノ粒子の粒子品質や品質安定性などを向上させるための前処理技術や後処理技術に注目が集まっています。
ナノ粒子の作り方
一般的な粒子の製造には、大きく分けて2つの方法があります。
1つは固体を粉砕する方法です。粉砕していく手法は「ブレークダウン」と呼ばれています。2つ目は、分子レベルの材料から徐々に大きくしていく「ビルドアップ」です。
ブレークダウンは量産に向いた生産性の高いナノ粒子製造手法です。さらに細かいナノ粒子の製造には主にビルドアップの手法がとられます。
以上の前提を踏まえた上で、具体的なナノ粒子製造の方法について前処理から後処理まで解説していきましょう。
ナノ粒子製造の前処理
ナノ粒子を製造の前処理では、ナノ粒子化する材料をガス化させたり、溶液化するのが一般的です。これは固体のままでは高純度を実現するのが難しいのと、粒子径を安定化するのが難しいという問題点があるからです。
ナノ粒子製造の方法
ナノ粒子を製造していくには、大きく分けて3つの手法があります。
- 固相法
- 気相法
- 液相法
この3つの大きな枠から、さらにいくつかの手法に分類されナノ粒子が製造されています。
どのようにしてナノ粒子が製造されるのか見ていきましょう。
固相法
固相法は、物質が固体の状態で粉砕したり、結晶を育成したりする手法を指します。
物質のバルク(塊)を素材に、機械を使って粉砕していく「機械的粉砕法」が代表的です。機械的粉砕法にもいくつかの種類がありますが、ナノ粒子化したい物質の粗大粒子と粉砕用のビーズを撹拌して、粗大粒子とビーズの衝突する衝撃で粉砕する「ビーズミル」という手法があります。また、ビーズミルには、空気中や不活性ガス中で行う「乾式ビーズミル」と、液体中で粉砕する「湿式ビーズミル」の2つがあります。
他にも化学反応を使って粒子を成長させる手法がありますが、凝集体を生成しやすいというデメリットがあります。
気相法
気相法は簡単に説明すると、物質を気化させて発生した蒸気を冷却し粒子を取り出す手法です。
気相法を使うと純度が高く、粒子径が安定したナノ粒子を得やすいのが特徴です。その反面、一度に生産できるナノ粒子の量が少なく、コストがかかるという弱点があります。
気相法に分類される技術には化学反応で蒸着させる「CVD法」、不活性ガスと金属を使った「ガス中蒸着法」、レーザー光で蒸発させる「レーザーアブレーション法」などがあげられます。
液相法
液相法では、液中に溶けた物質を化学反応で核を形成し、核を成長させナノ粒子を製造します。化学反応を利用しているため、放っておくと反応が進んでしまいます。このような理由から粒子径が大きくなってしまう点には注意が必要です。
気相法に比べて液相法は量産性に優れていますが、不純物が混入しやすいという弱点があります。また、数ナノメートル以下の小さな粒子を製造しにくい点もネックです。
液相法には細かく分類すると「液相還元法」「水熱合成法」「中和分解法」「加水分解法」「ゾル・ゲル法」などがあります。
後処理
これまで紹介してきた製造工程でナノ粒子は作られますが、良質なナノ粒子として製品化する場合、不純物を除去したり、粒度を揃えたりといった工程が必要です。また、気相法で製造したナノ粒子は、気体中に分散した状態なので、回収する必要もあります。
液中である場合、ナノ粒子の捕集や粒度の選定などには、遠心力を使用するのが一般的です。また、加熱しナノ粒子の凝集を防ぎつつ不純物の除去を行う場合もあります。
純度や粒度を高めたナノ粒子には、性能を向上させたり、反応性を弱めたりする目的で、コーティングを施す場合もあります。